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10月19日(木)
自宅なのだが、どこか友人の下宿のようなたたずまい。
私は布団をしいて寝ていると、父が帰宅して、その布団をまたぎ電気をつけた。
上は喪服、下はジーンズといった妙な出で立ちで、しかも頭には殺し屋のような
黒の帽子をかぶっている。私は眠い目をこすりながら
「葬式だったの?」と尋ねると、父は「そうだ」と答える。
すると目が覚めて、私の顔のまわりで季節外れの蚊が羽音をたてていた。
気がつけば、父はすでに10年以上前に亡くなっているのだった。
3月2日(木)
友人からの電話でおこされる。仕事先のトラブルでどうにもならないらしい。私は若い頃の辛いアルバイト(真冬の屋上でのコンクリート打ち、靴に水がしみて泣きたい気持ち)の事など思い出して、人事では無い。
さっそく仕事がらみで繋がった、ある映画会社に問題解決のため出向く事にする。ところが私は一介の失業者で、友達のトラブルも明日は我が身なのだった。もはや一刻の猶予もない!ラッキーな事に、エレベーターの途中で社員の一人と同乗した。さっそく、トラブルの方策を相談するが、彼は私のキャリアの方が興味があるらしく、話しに中々乗ってこない。私の歌手としての才能やら諸々についてしつこく話したがるのだが、しかしそんな事より仕事を探す事の方が、今の私にとっては重要な事なのだった。ところが彼は無神経に、延々とキャリアについてたずねて来る。エレベーターはどこまで上がって行くのだろう?ドアは中々開かない...
2月9日(木)
仕事で最終に乗り遅れてしまった。
ギターを持っているところをみると、どうやら歌の仕事らしい。
この街で夜を明かすしかないので駅に向かう。
高円寺まで行こうと思い、190円の切符を買うが、気がつけばここはおなじみの高円寺ではないか。最終電車が無いというのに切符を買って高円寺に行こうと云うのも妙な話だが、遮断機をくぐり、線路をわたって、とにかく北口に出た。切符は帰りに使えば良い。
どこか知らない店で夜を明かすのも良いかなと思ったが、高円寺なら「稲生座」がある。誰か知り合いでもライブをやっていれば、なんとか時間もつぶせると思い直す。
「稲生座」に向かう途中、深刻そうな顔をした、作業服の男とすれ違うが、それは実は私なのであった。どうやら失業してしまい、先行きの事を考えるが、やはり自分の興味の無い仕事には向いていなかったのだと思い当たる。
やはり、従来の石切作業に戻って、一からやり直そう!駐車しておいた車に乗り込むが、それはコンボイのようなでかいトラックだ。コックピットに乗り込むと、なにやら勇気がわいて来る。エンジンのスイッチを素早くいれて、でかい車体をグイン!と方向転換、にぎるハンドルも軽やかだ。頭の中では、墓石くらいの石材を二本切り分けて、11110円、で、もうけが8500円とか思いめぐらす。しかし、そんなことよりも、石を切り分ける工具の素晴らしいアイディアに感心する。そして、石を切りながら同時に水を出すシステムは、この先改良の余地がないほど完璧なのではないだろうか?もし、このシステムがなければ、工具は石共々大爆発をおこしてしまうなどと、どうでも良いような考えが次から次へと浮かんで来るのだった。
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